【書評】アマテラスの暗号

「アマテラスの暗号」は日本と世界の古代史をテーマにした本格ミステリーです。「ダ・ヴィンチコードを凌ぐ歴史ミステリーが、禁忌の秘史に迫る!」
の帯に惹かれて手に取りました。ダ・ヴィンチコードは見たことないけど。

あらすじ

主人公である賢司は日本人の父とアメリカ人の母を持つ男性。両親は賢司が幼い頃にに離婚していたため、父の事は殆ど記憶にありません。そんな父がニューヨークで事件に巻き込まれて亡くなったと知らせを受けます。賢司の父は日本に古くからある神社の宮司で、ニューヨークのホテルの一室で何者かに銃で撃たれて亡くなりました。父が残した紙切れには不思議な暗号が残されていました。この暗号と日本の神道、そしてユダヤ教の関係が父の死に関係していることを知り、暗号の解読と父が亡くなった理由を探り始めます。その過程で、賢司これまで考えも及ばなかった日本の神道のルーツを知ることになります。

所見

いわゆる「日ユ同祖説」をテーマにした物語です。主人公賢司は父の死をきっかけに世界の歴史を根底から覆しかねない日本の神々のルーツを探る旅に出ることになります。
テーマやストーリー展開は面白いですが、中盤以降若干ペースがもたつく所と、ある程度の知見がないと、臨場感が伝わって来ないのが残念なところです

オススメ1仮説と検証のサイクル

何といっても、緻密に積み上げられていく仮説と検証のサイクルが見ものです。実在する神社、祭事、絵画、書籍、歴史的発掘物には日本人とユダヤ人の祖先は同じであったことを示唆する物が多数存在します。物語の中でも京都の祇園祭や徳島のxxxは、ユダヤ教の祭事と非常に酷似しているとの描画があります。現実の世界ではこれらは一つの説に過ぎませんが、この物語の中ではあたかもこれが真実である読み手が「解釈せざるを得ない」ほど、論理的に矛盾のないストーリーとして組み立てられています。かなり厳密な調査を行われたであろうことが、ひしひしと伝わってきます。

ちょっと残念な点

主人公がゴールドマン・サックス出身であることの意味

前半はゴールドマン・サックスで手腕をふるっていた頃の賢司の様子が頻繁に登場しますが、特に物語の進行とは関係なかったりします。
この物語の主人公の設定には以下の2つの要素が必要ですが、これらを兼ね備える事が出来た設定なのかもしれません。
1.資金力
賢司は父である海部宮司が亡くなる前に残した「アマテラスの暗号」を解読するために日本各地にある神社を訪ねて回ります。そうなるとそれなりの資金力が必要になります。
2.国際的な友人関係
暗号を解読するにあたり、ユダヤ教、イスラム教、日本の神道の歴史を事細かに解説し、見解を述べていきます。そのため様々な国をバックボーンに持つ友人の存在が必要だったのかもしれません。また、今回の暗号が全世界を巻き込むような騒ぎになることを示唆しているのかもしれません。

リアルすぎるがゆえに

先にも述べましたが、この物語のすばらしいところはなんといっても緻密に調べ上げられた歴史の背景、神話の描写にあります。実際の神社や祭事の写真、聖書にまつわる絵画が挿し絵として入っています。ただ、一つ一つの設定がリアルすぎるが故にに違和感を覚えることがあります。例えばスマートフォンで日本とユダヤに関する調べ物をする場面が結構沢山あるのですが、実際にこの手の調べ物をすると様々な文献や記事がヒットします。賢司とナオミは「こんな事実は知らなかった、、、」と驚愕してますが、実は現実世界では既知の事実だったりします。リアリティがあるが故に違和感を感じるシーンではありました。

知らないとわからない

物語の後半で賢司と、暗号解読のパートナーであるナオミは日本の神道の神々の名前にこそ暗号解読のヒントが隠されているという仮説を立てます。この仮説を立証するにあたり、神様の名前を様々な方法で解析していきます。例えばこんな感じで、、、作中の2人は新たな発見と驚きで凄まじく興奮しているのですが、このあたりの背景に疎い私は少し置き去りにされた気分になります。テンポよく進むシーンなので尚更。まぁ細かい所は気にせずに読み進めていいシーンなのかもしれません。

とはいえ、やはりよくできた物語だと思います。日ユ同祖に関する書籍は数多く存在します。これをきっかけに他の本を手にとってみるのも面白いかもしれません。